福岡市東区青葉・土井で予防歯科に取り組む歯医者「青葉イーストコート歯科・こども歯科(ミスターマックス土井店敷地内)」のブログです。
勤務歯科医師が開業に至るパターンを3回に渡ってお話しします。
前回は、周囲に乗せられるままに開業へと向かう「流され開業」についてお話ししました。
今回は、その中でも王道の「棚ぼた開業」についてお話します。
王道?実家の歯科医院をもらいます。
テレビをつけると沢山の2世タレントと呼ばれる芸能人が活躍しています。
これは、芸能界に限った話ではありません。
コンビニ以上に歯科医院が存在する現在、親が歯科医師であり、実家の歯科医院があるというのは素晴らしいアドバンテージです。
え?
親の医院を継がなければならないなんて自由がなくて可哀そう?
たしかに、それもありますよね。
でも、歯科医院開業という現実と向き合った時、実家が歯科医院というのは非常に有利です。
では、実家が歯科医院であるアドバンテージは何でしょうか?
経営感覚に鋭い人は、「初期投資」だと答えるでしょう。
素晴らしい!
「小さく産んで大きく育てる」は、会社経営の大原則です。
歯科医院は床下配管等の内装工事、高額な医療機器、更には時代のニーズに合わせて内装費も高騰傾向で、開業には多大な初期投資が必要です。
親の歯科医院を引き継ぐことで、初期投資は大きく減らすことができるでしょう。
しかし、多くの場合、内装や機器の劣化があり、新規開業に近い初期投資をして大幅リニューアルをする先生も多くいらっしゃいます。
実家が歯科医院である真のアドバンテージ
それは、実はハード面ではなく、目には見えないソフト面なのです。
現在、街の至る所には歯科医院が存在します。
この中で、新規開業する場所を見つけるのは非常に困難です。
駅前や交通量の多い交差点、住宅地からアクセスしやすい場所など良い場所はすでに歯科医院あります。
そうなると新規歯科医院を開業しようと思ったら、既存の歯科医院の近くに開業せざるを得ないわけです。
その地域の患者様はもともと他の歯科医院に通っているわけですから、他の歯科医院に通っている患者様を奪うしか自分の医院を成り立たせる術はありません。
しかし狭い歯科業界、簡単に商売敵と割り切るわけにはいきません。商売敵どころか地域の皆様の口腔衛生を守る先輩であり、絆で結ばれた仲間として生涯にわたり活動していくわけです。
鋭い方であれば、「真のアドバンテージ」がハード面でなく、以下に挙げたようなソフト面であることがお分かりだと思います。
- 場所が良い。そもそも開業したのはこんなにも歯科医院が溢れかえる前ですから、良質な開業地の選択肢が多くあったのです。
- また、その場所で今日まで長く歯科医院を営んできたわけですから、極端に悪条件な場所であることは稀とも言えます。また、お父様はその地域で長期間御活躍なさったわけですから、近隣の歯科医院とも良好な関係を築いていることが多く、歯科医院を引き継ぐ際に地域から温かく迎え入れてもらえることが多いのです。この精神的な安心感は非常に重要なのです。
- そして、何よりのアドバンテージは「既存患者」の存在です。つまり、歯科医院を引き継いだ時点で、固定の患者様がいるわけです。これは最大のアドバンテージです。どんなに素晴らしい歯科医院を開業しても、患者様が来院されなければ経営は成り立ちません。歯科勤務医が開業の際に最も心配なのは、「自分の治療の実力でやっていけるだろうか」ではなく、「患者様が来院されなかったらどうしよう」なのです。だって、初めての商いなのに、5000万~1億を投じて開業するわけですから、新米院長となった初日から患者様の予約があるというのは何よりも意味のあることなのです。
(もちろん、自分ですべて借金して独力で歯科医院を開業される先生もいらっしゃいますのであしからず。)
私たちは、2世でない・・・泣
残念ながら、私たちは2世ではありません。泣
しかし、そのおかげで何に縛られることもなく、「こんな歯科医院があったらいいな」と思える理想の歯科医院を開業する覚悟ができたのだと思います。
そもそも、今こうして歯科医師として、地域の皆様のお口の健康を守れるようになれたのは、他でもなく両親が大切に育ててくれたからこそです。
両親には心から感謝しています。
開業後、青葉・土井の地域医療に精一杯貢献していくことが、両親への何よりもの恩返しになると考えています。
いよいよ次回は「どうして開業したいの?」シリーズ最終回。
最近、よく耳にするようになった、「棚ぼた?開業」についてお話しましょう。
「どうして開業したいの(3)」へ続く